ゆっくりになるのが、いいんです。

歳をとると、よく「できなくなること」を数えるようになります。
膝が痛い、目が見えにくい、頭も回らなくなってきた……。
でも、それはほんまに“衰え”なんでしょうか。

たとえば階段を上がるのに時間がかかるようになった。
けれど、そのぶん途中で季節の風を感じられる。
道ばたの草花に目が行く。
玄関先で「おはようさん」と挨拶する時間が増える。
それって、実は豊かになってるんちゃうかなと思うんです。

若いときは、朝ごはんもパパッと済ませて出ていった。
でも今は、朝の光を浴びながらゆっくりと食卓につき、
自分の好きなパンを焼いて、湯気の立つコーヒーを注いで、
「今日は何しよか」と静かに考える時間がある。

料理にも時間がかかるようになったけれど、
手をかけるほどに、野菜の色やかたち、香りが楽しくなる。
手間を惜しまんようになって、味にも気づくようになる。

若いときにはなかった「気づく力」や「味わう力」が
ゆっくりと、じわっと育ってきてるんやと思います。

だから、急がんでええんです。
できることが減る代わりに、
感じられることが増えていく。

“急がない暮らし”ができるようになったら、
それは、ほんまの贅沢な生き方なんとちゃいますか。

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