第六感が一番げんきになる住まいと庭
― あるお客様から伺った話 ―
あるお客様が、こう話してくださいました。
娘さんが長女を出産されたときのこと。
ベッドに横たわるお母さんのそばで、まだ一歳十か月の長男・Tくんが、
お父さんの手を取り、お母さんの手の上にそっと重ね、
さらに自分の小さな手を添えたのだそうです。
誰も教えていない。
「こうしなさい」と言った人もいない。
それなのに彼は自然に、家族三人の手をひとつに結んだ。
お客様はその光景を見て、涙がこぼれたと言います。
「たぶんあの子の中に、“安心の記憶”があるんです。
私と散歩するとき、いつも左手で手をつないでくれます。
きっとそのぬくもりを覚えていたのでしょう。」
私はその話を聞きながら思いました。
――手は、言葉よりも早く愛を覚える。
“つなぐ”という行為は、本能であり、祈りでもある。
そしてそれは、まさに「第六感」が働いた瞬間だったのだと。
目に見えない“安心”や“ぬくもり”を感じ取る力。
それこそが、人が本来もっている「げんきになる力」なのです。
私たちがつくる住まいと庭もまた、
その第六感を呼び覚ます場所でありたい。
風の流れや光の角度、木の香りや土の感触、
それらが人の心に触れ、
言葉を超えて“安心”を伝える──。
家族が自然に手をつなぎたくなるような、
そんな空気をまとう住まいと庭。
そこにこそ、「生涯げんきに暮らす知恵」が宿るのだと思います。
私はその話を聞きながら、ふと──
「ライフスタイルフィット診断プラス」を開発した日のことを思い出しました。
言葉では説明できない“好き”や“落ち着く”という感覚を、
どうにか可視化できないかと思い、
人の感性と本能、第六感の働きを見える化するためにつくった道具です。
あのとき感じたことが、まさにこの瞬間に重なりました。
やはり、人を本当にげんきにするのは、理屈ではなく“感じる力”なのだ。
第六感をいかさずして、どうして良い住まいや庭ができるだろうか。
住まいとは、図面や数値でつくるものではなく、
心の深いところにある“感じる設計図”を、そっと形にすること。
それが、私の仕事の原点であり、
「暮らしで治す」という思想の出発点なのです。
